南相馬修道院からの便り

「除染土の行先


小高川に今年も白鳥がやってきました。いつもよりたくさん群れてやってきました。
毎年、約百羽くらい村上海岸の耕作放棄地、居住不可の土地(元居住地、田んぼ)に帰ってきていました。
今年は、村上海岸で大きな工事が始まったので、そこに帰れないのでしょうか?

復興のための工事も必要ですが、自然が破壊されると、生態系も崩れ、
それが巡り巡って人間の生活に悪い影響を及ぼします。
ここに住んでいると、大地の悲鳴、地球の叫びが聞こえてくるようです。


↑削られて赤裸になった山。元は、後ろの山は見えない高さがありました。

相馬藩の藩主の墓のある菩提寺、同慶寺の裏門の真ん前の山がひと山、赤裸になってしまいました。
2021年ごろから、木が伐採され、山土が掘り出されてダンプカーが運び出して、山が消えてしまいました。
この土はどこに行くのでしょうか?
おそらく、飯舘、浪江、大熊・双葉など、まだ除染しているところに、
はぎ取った土の代わりに入れられるのではないかと思います。
毎日、土を運ぶ何台ものダンプカーに行き会います。
除染した土は黒いフレコンバックに入れて運ばれますが、普通の土はむき出しで運ばれます。
時々強い風が吹くと土埃りがたちます。
以前、飯舘の近くを通った時、車の前に「除染土」というエプロンを付けた40台以上のダンプカーに出会いました。
こうして除染された土は、例の中間貯蔵施設に運び込まれ、最終処分場が決まるのを待つのです。

山から掘り出された土は、一時的に仮置き場に積み上げられ、放射線量の検査を受けます。
しばらく保管されて安全が確認されると、一時保管の場所から、除染現場に運ばれるようです。
私たちが毎日小高から原町に往復する途中に、この土の一時保管場所があります。
毎日、その様子を横目で見て、「今日は土が少なくなったね」とか、「また増えたね」などと話します。

14年経っても、まだまだ表土をはぎ取って、他所から土を運んで埋め立てている状況です。
畑に作物を植えることが出来るまで、あと何年かかるのでしょうか?
原発事故が起こったら、どんなに人間が頑張っても、元の自然や人間の生業は容易には戻ってきません。
巨大地震が予測される中で、日本各地にある原発の対策は何と重要なことでしょうか?

政府の原発回帰、原発の耐用年数延長に対して、国民の意識が薄いところに問題があると思います。
この政策に対して、どのような態度をとるかが問われていると思います。



「わたしの召命物語 -百倍の報い-

高校3年生の2学期の終わりころ、シスタ―マリ・フランシスの宗教の時間で、
「女性の生き方」という授業がありました。
高校を卒業してすぐ就職する人も多かった時代です。
社会の一番基礎となる家庭、良い家庭を作って、社会に良い貢献をする生き方、
医師や看護師として病む人々のために尽くす生き方、
弁護士や裁判官など法曹界を通してより良い社会を構築していく生き方、
一般会社などの社員として、農業漁業などを通して神の創造のみ業に参与する労働の尊さなどなど、
いろんな方面から人間として、
女性として頂いたタレント(才能・特技・健康等々)を生かして社会に貢献する生き方について考えました。
この授業の中で、私はやはり、両親そろった家庭で、女性として母親として生きることの大切さに心を動かされ、
子どもに恵まれた家庭で幸せに生きる自分を想像していました。
この授業で、修道者の生き方については全く触れられませんでした。

高等学校を卒業して、挫折を体験しながら、女性としての生き方、
一回きりの人生をどのように生きるか思案しました。
家庭に入って自分の幸せを喜ぶ生き方と、
もっと違った生き方で社会の役に立つことが出来るのではないかと、考えました。
修道生活を考えるようになって初めて、学校に修道者がいたことに気が付いたのです。

シスターたちは、祖国を遠く離れて異文化の世界に神の存在を伝えるために生涯を捧げたのです。
そのような生き方もあるのだ、と私はやっと納得しました。
そして、私は自分の人生は自分のものでなく、神から与えられたものであることにあらためて気付きました。
神のお望みになることに自分を賭けようと決心しました。

今でもよく覚えていますが、長府修練院に出発する前日、
福山駅前の天満屋の前で、高校を卒業してすぐ結婚した同級生にバッタリ会いました。
背中にかわいらしい赤ちゃんをおんぶしていました。
友達は本当に幸せそうに赤ちゃんを見せてくれました。
友達と話しながら、ちょっぴり羨ましい気持ちになっている自分に気が付いて、
その気持ちを振り払って、「私の道は違うの」と自分に言いきかせたことを覚えています。

福音書のイエスのみ言葉にあるように、
「私のために、親、きょうだい、畑…を捨てた者は、その百倍を受ける」(マタイ19:29)と、
今本当にこの約束は真実だと断言できます。
百倍以上の報いをいただき、
世界中のきょうだいと結ばれて生きることが出来る幸せをかみしめています。


今日はここまで、皆さんお元気でお過ごしください。

援助マリア修道会 南相馬修道院 北村令子





TOP援助マリア会とは援助マリア会の霊性援助マリア信徒の会日本の援助マリア会世界の援助マリア会