南相馬修道院からの便り

「いのちのパン」


クリスマスが近づいてきました。
主イエスは、「世を生かすために天から降って来たパン」(ヨハネ6/51)として、
すべての人が、真の命を生きられるよう、食べられるために、飼い葉おけに生まれてくださったのです。
すべての人が、神様の命に生きるために。

命の与え主の誕生の喜びの時であるこのクリスマスですが、
ここ南相馬では、自ら命を絶つ人が、今でも多いのです。
福島県は全国で4番目に自殺者が多い県で、福島県の中でも南相馬市が一番多いとのことです。
南相馬市は、大地震と津波の上に東京電力福島第一原子力発電所の爆発によって多大な被害を受けました。
放射能汚染のため、全住民避難を余儀なくされた小高区。
屋内退避の原町区とさらに、鹿島区では避難所が開設され、避難者を受け入れました。
同じ南相馬市でありながら、補償等も違った立場に置かれたことがストレスや分断の原因になったようです。
家族の中で意見がバラバラになったり、親戚同士で補償金の額が大きく違ったり、
本当に過酷な環境の中で、長期間、忍耐を強いられた人々が心身に異常をきたさない方が不思議なことです。

度重なる避難を余儀なくされ
( 中には7回も避難所が変わった人もあり、島根県まで避難した方もあります)
アルコール依存症になった人、避難所の生活のストレスで視覚障害になった人、
通院中の人で度重なる移動で、治療薬が入手できなくなって悪化し、入退院を繰り返すなどなど、
震災関連死・孤独死は東日本大震災の被災地で、南相馬が一番多いと聞きます。

私が知っている小高の復興団地の男性が、昨年自死されました。
亡くなる2,3日前に訪問して顔を合わせていたのでショックでした。
朝早く散歩のとき、度々桜並木の下で元気よく「おはよう!!」と声かけあったり、
コンビニなどでばったり出会うと声をかけて下さっていた方です。
じっくりお話したことはないのですが、
私にとっては、復興団地の方の中で割合とよく顔を合わせ、声を掛け合っていた方の一人です。
元気な方のように見受けられたのですが、亡くなる数か月前に医師から病気の宣告をされたそうです。
そのことを苦にされたのではないかと想像します。
亡くなったのは、震災前に自宅があった跡地でした。
地震と原発事故の被災で自宅は解体されていたようです。
どんな思いでそこに行かれたのかと想像すると本当につらいです。

事情はそれぞれに、いろいろあると思いますが、
やはり、家族がおられても心から話せる人がなかったこと、孤独の闇の中で苦しまれたのでしょう。
「世の光」としてお生まれになったイエスに、祈ります。
降誕後、エジプトに避難されたイエスさまは、避難民のつらさを最も分かる方ではないでしょうか。
当事者として体験されたイエスさまが、彼らの苦悩を知り、命のパンとして力づけ、
生きる希望となって下さるよう祈るばかりです。
今、世界でどれほどの避難民があることでしょう。

父なる神様が、この一人ひとりの叫びを聞き、苦悩を知って、御子イエスを命のパンとして、
一人ひとりの心に誕生させてくださいますように!!


「クリちゃんのクリスマス」


クリスマスにちなんで私の創作童話をお届けします。
(これは2019年の原町教会の子供会のクリスマス会で話した、子供向けの話です。)

クリちゃんは5歳の女の子です。クリちゃんのお家はお父さんが早くなくなって、
お母さんと小学4年生と2年生のお姉ちゃんと2歳の弟ぼくちゃんの5人家族です。

クリスマスがやってきたのですが、お金がなくてプレゼントが買えません。
お母さんは子供たち一人ひとりに、いつ編んだのか手袋を編んでくれました。
クリちゃんには真っ赤な手袋でした。
4年生のお姉ちゃんは山に行って松ぼっくりを拾って来て、
緑の絵の具で塗ってクリスマスツリーを作りました。
小ちゃな紙に「緑は平和だよ。いつも平和でいよう」と書いて袋に入れました。
2年生のお姉ちゃんは折り紙で鶴を折って、
「空を飛ぶ鶴のように夢を持とう」と書いて添えてくれました。
2歳のぼくちゃんは、ニコニコはしゃいでいました。
クリちゃんは?何のプレゼントを準備したでしょう?

その手には何にも持っていませんでした。
お母さんが「クリちゃんは何のプレゼントかな?」と催促しました。
クリちゃんはモジモジして、パッと真っ赤な手袋の手を大きく開いて、
ぼくちゃんとお姉ちゃんに抱きついて言いました。「私がプレゼントだよ!」と。
そしてお母さんにも抱きついてその膝にちょこんと座りました。
するとお母さんがクリちゃんをぎゅっと抱きしめて言いました。
「そうだね。クリちゃんがいてくれるから嬉しいんだね。最高のプレゼントだね!!」
するとお姉ちゃんたちが、「くりちゃんずる~い」と言って、お母さんの膝に皆乗っかって、
団子になって転げまわって笑いました。 とっても楽しいクリスマスの夜でした。

でも、正直に言うとクリちゃんは、プレゼントを買うお金がないし、
お姉ちゃんのように、何にも作ることができなくて悲しかったのです。
クリちゃんは思いました。
「馬小屋のイエスさまも何にも持っていないよ。でもイエスさまがそこにいるだけでみんな嬉しいんだよ。
弟の僕ちゃんも何にも持ってないよ。でもいるだけで嬉しいんだよ。」と。
そしてお母さんもみんなもクリちゃんのプレゼントを喜んでくれてほっとしていたのでした。
クリちゃんのプレゼントのお話はこれでおしまい!



皆様良いクリスマスをお迎えください!!

援助マリア修道会 南相馬修道院 北村令子





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