南相馬修道院からの便り  「漁師の声」


昨年8月から汚染水の海洋放出が実施され、いろんな方面から声が上がっています。
汚染水は、廃炉作業が終わるまでたまり続けるものです。原発事故による熔解デブリは常に水で冷却しなければならず、
デブリに触れた水は強度の放射能汚染水となります。
また冷却水だけでなく、地下水や雨水が放射能汚染水となってたまり続けるのです。
その放射能汚染水を「アルプス」と言う放射性物質を除去する工程を経て、
60種類以上の放射性物質を基準値以下になるよう取り除きます。
それでも尚、残り続けるのが三重水素トリチウムです。このトリチウム汚染水は無害と(注)IAEAも承認し、
お墨付きをいただいたという格好で、政府と東電は海洋放出を強行しました。
政府はIAEAに29億円の支援金を出しています。(お金がものを言う政治かな?)
(注)IAEA=国際原子力機関

第1回目、2023年8月24日から9月11日、第2回目10月5日から10月22日、第3回目11月2日から11月19日、
それぞれ7,800㎥、タンク10基分。第4回目を2024年2月28日から3月16日まで放出しました。
現在1060基以上のタンクがたまっています。
1回に10基ずつ、年に8回放出したとして、13年かかります。その間にも毎日たまり続けるので、13年以上かかることになります。
莫大な量の汚染水を放出し続けることで、海の状態はどうなるのでしょう?



今回は東京電力福島第一原発事故のトリチウム汚染水(処理水)海洋放出の影響を受けておられる相馬の漁師さんの声を届けます。

昨年10月29日に、カトリック原町教会での小野春雄さんの講演、
および原水爆禁止世界大会福島大会(2023年7月30日)における、講演記事から、その概要をお伝えします。

まず小野春雄さんは、政府のやり方に強く抗議して言われました。
「政府は、『海洋放出は漁業関係者の理解を得て実施する』と言いながら、
福島県の漁業組合や、全漁連との対話でも反対を訴えたにもかかわらず、海洋放出を強行した。
日本の政府は約束を守らない政府だ!!」
「『海洋放出による、風評被害はどうですか』と聞かれるが、
今のところ多くの人が、福島県を助けるために、常磐物の魚を買ってくれるが、輸出は打撃である。
宮城県の漁業は何の制限もないが、福島県は水揚げしたものすべてについて検査をして、合格したものだけが市場に出る。
魚は福島県沖も宮城県沖も自由に泳いでいるよ!魚には住民票がないのでね!!
日本、いや世界の海を魚は自由に泳ぎ回る。海はつながっている。
だから福島の漁師だけじゃなく、全国の人たちが、人間として反対の声をあげてほしい」

「風評も大きな問題だが、俺たちが心配しているのは、30年、50年先の海がどうなっていくのか、
子や孫の世代、いやもっと先の人たちにきれいな海が渡せるのか、それを俺は心配している。」
命源である海は神聖だ。今、自分達が食べているものと同じ魚を4千年前の人たちが、食べていたという考古学的証もある。
これからこの海で、これまでと同じ漁ができるのだろうか??政治家は海のことはわからない素人だ。

今はまだ1か月に10回の試験操業で、本格操業ではないんだ。
いつになったら自由に自分たちの仕事場である海に出られるのか?」
「タンクの処理水が無害なら、農業用水や、果樹園の散水などにも、流してもいいではないか?
何百億円という海底トンネルを作らなくても、もっと別の利用方法があるのではないか?
もっと時間をかけて解決策を探すべきである。政府は、『待ったなし』というが、何が待ったなしだ。
放射線汚染のために住宅が建てられない土地、広大な土地があるではないか?そこにタンクを増設できないのか?
廃炉まで30年、40年かかる間に半減期が来るのではないか?
今すでに10年以上たっている。廃炉もまだデブリのカケラすら取り出せていない。30年、40年で完了するのだろうか?
政府の方針、やり方は矛盾だらけである。汚染水放出は許しがたい暴挙だ!!」と。

13年がトリチウムの半減期と言われています。トリチウム汚染水を「処理水」と呼び、無害であることを印象付けようとしています。
この処理水には「アルプス」で多各種の放射性物質を除去といいますが、基準値以下に処理したとしても、
トリチウム以外の放射性物質が皆無になるということではないそうです。
ですから、いくら希釈したとしても海の中でたまり続けるわけですから、どうなるかは未知数です。
本当に無害かどうかも何十年何百年経って判ることで、結果が現れた時には取り返しのつかないことになります。
小野さんが危惧して声を大にして訴えているのはそのことだと思います。
今は無害だと言っても、結果のつけは何代先の人々だということで、私も反対を唱えたいと思います。
また、すでに空になったタンクの処理が難題となっているようです。



ちょっと軽い話題に変えます。上の写真は、ざる菊(丸菊という地方もある)で、
修道院から大通りに出る道のわきに植えられています。
区役所職員の駐車場の周りにも、ぐるりとこのようなざる菊が咲いていました。
多くの家の周りに丸く整えられた菊を見て、この地域の人は本当にこまめに剪定をしておられると感心していました。
ある時そのことを話したら、「自然にまぁ~るくなるのよ、ざる菊だから」と。
それで修道院にも数本植えたら、何とまぁ~るく咲きました。
自然にそうなるのだからと放っておいたら、次の年にはまぁ~るくなりませんでした。
聞いてみると、次の年には1本1本株分けして植え替えてやらないといけないのだそうです。
やっぱり美しく咲かせようとすると、手がかかっているのですね。


新しい年度も手抜きをしないで、生きましょう!
今日はここまで。皆様お元気で!!

援助マリア修道会 南相馬修道院 北村令子




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