南相馬修道院からの便り  「おれたちの伝承館」


七月に、小高駅に近い所に「おれたちの伝承館」という災害伝承館がオープンしました。
東京電力福島第一原子力発電所の原発事故の教訓を伝承する現代美術家たちの手作りの美術館風の伝承館です。
原発によって避難を余儀なくされた会社の空き倉庫を自分たちの手で改修し、避難指示解除から7年目の7月12日にオープン。
原発事故の災禍を伝える絵画や彫刻、写真など約50点が展示され、
「アートがもたらす優しい問いかけを通して、原発事故を問い直してほしいと」訴えています。

(村上海岸の小さな貝殻)

布の貼り絵は、故郷の景色を布 の端切れで描いて、自分たちの 想いを表現しています。
津波で荒らされた、村上海岸の小さな小さな貝殻が、叫んでいます。
「海にトリチウムを流さないで!!」「海を汚さないで!」                        
「アンゼンっていっても だれにもわがんねべ」


この作者は、ある新聞記事で、干からびた仔牛の死骸が「まるで紙のようだった」という表現を読み、この作品を構想したそうです。
千年以上も引き継がれてきた伝統工芸越前和紙で、
否応なく何百年も引き継がなければならなくなった放射線被害を表現(作者の文章を要約)しています。
これを見て私はちょっとショックでした。
牛を飼っていた方のいろんな話を聞き、写真集でも見ていましたが、芸術作品の強く訴える力を感じました。


7月24日、カリタスのメンバーは、5月に帰宅困難区域を解除された飯舘村の長泥地区(8月号で紹介)の視察に行きました。
中間貯蔵工事情報センター(中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO))の主催する「飯舘村長泥地区環境再生事業見学会」です。
飯舘村の長泥地区では、除染で発生した土壌のうち、放射能濃度の低いものを再生資材化して盛土に活用し、農地を造成する事業が進められています。
私は昨年の10月に一度視察をしているので、その後どのようになっているか確かめたいと思い参加しました。
それはそれは美しい緑の山道を車でいろは坂のようにくねくねと上り下りして、山の奥にある「花の里、長泥地区」と言われる村にたどり着きました。
再生資材化された土の上に、放射線被害のない土をかぶせた高台に、長泥地区コミュニティーセンターが出来上がっていました。
でも、近くに民家はありません。
コミュニティーセンターだけが立派に出来上がっているという感じでした。


トルコギキョウの実証実験場↑と稲作、大豆、トウモロコシの実証実験場(畑)。農家の方は福島から通っておられるとのこと。
今のところ、基準値以下の放射線量で問題はないということです。

でも、ちょっとショッキングな話も聞きました。
長泥地区はもともと住民も少なく、政府は除染する気はなかったようですが、住民が帰りたいと除染を強く希望したら、
実証実験場として受け入れるなら除染してもよいと、条件を付けられたとのことです。
住民は泣く泣くその条件を受け容れて、実証実験場としての村の再開を決断したそうです。
昨年、住民の方の口から帰還できることを喜んでおられたのを聞きながら、
私たちは帰りの車で「言わせられている感じがしたね」と話したのが当たっていたように思いました。
今回は住民の方との接触がなかったのが残念でした。
真相はなかなか見えてこないものですね!

今日はここまでとします。
皆様お元気でお過ごしください。

援助マリア修道会 南相馬修道院 北村令子




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