南相馬修道院からの便り 「志賀勝明氏【元請戸(うけど)漁業組合員】講演より」


皆様お元気でお過ごしでしょうか?
5月は、聖母月、学校でも教会でも、もちろん修道院でも、マリア様のご像が美しく飾られていることでしょう!懐かしく思い出します。
ここはお寺と神社がやたらと多い地域だと感じます。
古い伝統と宗教的な行事などが多く、プロテスタント教会の牧師さんとも話すのですが、
キリスト教伝道にとって、なかなか難しい地域だと。
でも、その伝統や文化、生活のスタイルなどの中に、キリストが大切にされた人としての心遣いなどが生きているので、
その部分を一緒に大事にしていけばいいのかなと思います。
人を温かく迎える心は、マリア様の心に通じると思います。
この地域の人々の心の安らぎを、マリア様にゆだねてこの聖母月を過ごしたいと思います。

ところで、先月の「いのちの光 フクシマ 3.15」での、 志賀勝明氏(元請戸(うけど)漁業組合員)の講演について分かち合いたいと思います。
3.15については4月号で説明しましたが、東電原発の3回目の爆発で、放射能が大量に拡散され、
20キロ圏内は全住民の強制避難が実施された日です。

志賀さんは若い時から浪江の請戸で漁師として働いてこられ、東京電力福島第一原子力発電所の誘致には最初から反対で、
「誘致にどこまでも反対するなら、漁に出て何事かあっても助けに行かない」と村八分の目にもあってこられたとのこと。
(実家は小高の村上地区で、津波で全地区が壊滅状態。 今も居住不可の地域でソーラーパネルがどんどん広がっていて、
私が毎月、月命日の11日に村上霊園にお祈りに行くたびに景色が変わっています。)

今、請戸漁港は試験操業から本格操業に移行したといわれているが、原発から10㎞圏内は、漁の自粛をするようにとの定めがある。
(私たちは本格操業ができるようになってよかったと喜んでいたのですが、実態はまだまだとのこと。)
農耕地の放射線の被害は、除染して汚染土を剥いで、新しい土と入れ替えをして何とか作物を作れるようになったが、
山は除染されていないので、海は山からの放射能を含む汚染水が川に流れ込んで土砂と一緒に海に運ばれるので、いつまでもきれいにならない。
国に、河川の調査をするよう請願しているが、手を付けてもらえない。
そして、魚も厳しい検査をくぐって、やっと売れるようになって、これから元の漁の状態に戻れるかというこの時に、政府は、この春から夏にかけて、
トリチウム汚染水の海洋放出の実施を宣言している。
(トリチウム汚染水(処理水と報道されます)は、無害だと国際原子力委員会も宣言しましたが、やっと風評被害が収まってきたこの時に、
また元の木阿弥になってしまうような方策に、漁を生業としておられる方々の気持ちを逆なでしてしまうようなやり方には、
私達でも納得がいきません。また、本当に無害なのか?疑問が残ります。)
漁師がどんな思いをしているか?河川の検査をして、実際に海がどんな状態なのかをしっかり見据えて、
納得のいく方針を打ち出していただきたい。と強く訴えられました。

そしてまた、今の日本の憲法は、まだまだ自由民権なども2割程度しか現実化していない。
言論の自由というが、マスメディアがどれほど統制されているか、国を相手に物申す時に見えてくると。
ご自分の身をもって体験されたことを分かち合ってくださいました。


そして、自分と同郷のこの小高が出した、憲法学者、鈴木安蔵の実家が、小高駅前通りにある。と。
今の平和憲法は、決してアメリカのGHQに押し付けられたものでなく、鈴木安蔵をはじめ、
数名の憲法学者によって草案がつくられ、それをGHQが採用したものです。
同じ駅前通りにプロテスタントの教会があります。鈴木安蔵は、熱心なクリスチャンの両親と一緒にこの教会に通ったようです。
洗礼は受けていないようですが、その精神にはキリスト教の人権、自由の精神が根付いていたのでしょう。
志賀さんは、「鈴木安蔵を讃える会」平和憲法を守る会を立ち上げ、運動を実践されています。


(上の写真は鈴木安蔵の実家)

自民党が、この平和憲法の改正を唱えていますが、この約80年間、
日本が戦争に巻き込まれなかった大きな要因は、この憲法9条の戦争放棄の精神にあると思います。
憲法記念日のあるこの5月に、平和憲法について考えることも大切かなと思います。
どんどん防衛費・軍備費予算が膨らんでいるこの日本の状況は、楽観できない感じになってきています。
広島出身の岸田総理大臣は、広島出身を強調して、核の脅威と平和を脅かすものに対して毅然とした態度をとると、
初めごろは約束をされたと思うのに、いつの間にか、原発も容認、稼働期限の延長、40兆円の防衛費、防衛費のための増税などと、
真逆の方向転換を宣言しています。
本当に世界に誇る平和憲法が、危うくなっているのを感じます。
小高出身の憲法学者、鈴木安蔵はこの日本の状況をどのような思いで眺めておいででしょうか?

今日はここまでとします。
皆様お元気でお過ごしください。

援助マリア修道会 南相馬修道院  北村令子




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