南相馬修道院からの便り。



梅の香りが漂う頃となりました。
ここ小高は紅梅の里と言う別名があります。
小高神社、相馬藩の城跡「浮舟城」も「紅梅浮舟城」と言われるほど紅梅がたくさんあったようですが、
今はその名にふさわしくないほど紅梅は少なく、4月にはむしろ枝垂桜が美しい所です。
きっと震災前にはそこここに紅梅がたくさん咲いていたのではないかと思います。
原発事故のため、その多くは除染のために切り倒されたのではないでしょうか。
修道院の川向こうにある高齢者施設の名称も「梅の香」ですし、
小高に設立された農業の会社の名前も「紅梅ファーム」などいろんなところに紅梅が冠せられています。
紅梅の花がたくさん咲いている里を思い浮かべると、本当に美しい里山が放射線でけがされ、
除染と言う処置によって姿を消してしまったかと思うと、悲しく悔しい思いがします。

大熊町の帰宅困難区域が、今年の春一部解除されます。昨年の12月3日のニュースで、
14世帯28人が帰宅準備宿泊の希望を申請していると報道されました。
大熊町は福島第一原発から数キロ(5~7キロ)で、まだまだ解除されない区域が多く、
解除されたところは18%に過ぎないとのこと、帰宅する方の周辺は除染されるようですが、
未除染地域が多い中で、生活に本当に支障がないのかも不安だと思います。
1000世帯も住んでいた地域に、たったの14世帯で生活ができるのだろうかと疑問に思います。



「震災遺構浪江町立請戸(うけど)小学校」 

小高区に隣接する浪江町では、昨年10月24日に請戸小学校が福島県で唯一の震災遺構として公開されました。
「請戸小学校は海岸から300メートルに位置する。
震災当日はすでに下校していた1年生11人以外の2年生から6年生までの児童82人が校舎内にいた。
校長の指示により、西に1キロほどの高台大平山(現在の大平山霊園:震災で亡くなった方の共同墓地)に避難。
この時この高台への上り口が分からず、そこを野球の練習場にしていた児童の誘導で登ったとのこと。
しかし、そこもあの大津波で危険と判断され、
国道6号線をたまたま通りかかったトラックの運転手の好意により全員荷台に乗り込み役場まで移動、全員無事だった。」
(福島民報2021.10.24抜粋)

この時の1年生の子供たちが、今高校3年生になっていて、10年ぶりの対面の報道がありました。
お互いに震災後別れ別れになっていましたが、会ってすぐ、1年生の時の仲の良かった時を思い出して懐かしがっていましたが、
その言葉の中に、自分たちには思い出す故郷での小学生時代はなく、
自分のくぐってきた体験を誰にも知らせないように気を遣って生きてきたとの共通の思いを語っていたのが、私には心に響きました。
また当時小学校6年生だった女性(23歳)が、「津波で家や思い出の品全てを失った私にとっては、校舎が残ってくれたことが嬉しく、
ここに来ると明るい気持ちになれる。」と言っておられました。

2015年10月に私はこの請戸小学校を視察に来させていただきました。
第一原発から7キロに位置する請戸小学校は、当時はまだ特別許可を受けた者だけに立ち入りが許されるのでした。
学校の外壁に「…電源補助金…」と書かれたプレートが張ってありました。
電源補助金と言えば東京電力福島第一原子力発電所を誘致するために交付される補助金です。
体育館に入って驚きました。舟形の体育館で、さぞ立派だったろうと想像し、目の前の床が波打って破れ、
大きな釘が剣山のように露出している様に、思わず涙が出ました。
私はちょうどその頃、福山暁の星学院の小学校の体育館の建築の資金繰りに頭を悩ませていた時で、
いったいこの体育館には何億のお金がつぎ込まれたのでしょう。と余計なことを考えてしまったことを思い出します。

近くの請戸漁港も周りの田んぼも荒れたままで、墓地の墓石がぐちゃぐちゃに砕け倒れたままでした。
ここは漁業の街として、民家も多く建ち並び賑やかな所だったようですが、
一軒の家も残らず流され、だだっ広い荒れ地に請戸小学校だけが痛ましい姿で残っていました。
多くの方が行方不明になりましたが、原発事故のため捜索活動も行えず、自衛隊が重装備で捜索を始めたのが4月3日とのことです。
家族を探しに入ろうにも放射線のため、立ち入り禁止になっていて、どれだけの方が探すことができなかったことで、
今も苦しんでいらっしゃるでしょうか?

今は、請戸漁港も昨年の4月から本格操業をし、少しずつにぎやかさを取り戻しています。
子供たちが避難した高台、大平山は「大平山霊園」として、めちゃめちゃになった墓地が移転され共同墓地となっています。 

(写真は2019年のものです。)


(右:亡くなった方82名の刻名)

来月は11年目の3.11がやってきます。
今日はここまでといたします。皆様どうぞお大事にお過ごしください。

援助マリア修道会南相馬修道院 北村令子


おまけ

修道院から歩いて2,3分の所に、貴船神社があります(火の神様とのこと)。
今年震災から11年ぶりに、「火伏祭り」というお祭りが行われました。
護摩炊きだと思うのですが、笛の音に合わせて獅子舞を献上していました。
朝、カリタスからの帰りに通りかかってやっていたので、すぐ出直して見に行きました。
消防自動車が出ていて、消防団の方が数名周りを取り囲んでおられました。
人垣ができていたのでうまく写真が撮れませんでしたが、鳥居の内側で獅子が舞っています。(1月9日)


お神輿があるはずですが、若者がいなくて、出来なかったそうです。
それに小高神社での出初式は、無観客で行われたそうです。コロナのため、残念ですね!
(火は既に小さくなっていました)



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