南相馬修道院からの便り。

ちょっと古いニュースですが、7月2日の「福島民報」の記事に驚くべきことが書かれていました。
(全国紙では報道されていないでしょう)
東京電力福島第一原子力発電所の原発事故の事故処理や廃炉作業で使われた
8000ベクレル以上(8000ベクレル以下の物で焼却できる物は減容化施設で焼却され灰にする)の
放射線量の高い廃棄物(燃料取り出しの作業員の作業服なども)が収められているはずの、
約4000基以上のコンテナの内容物が不明であると。すなわち何が入っているか分からないということです。
こんなことがあり得るのでしょうか?
しかも、そのうちの500基以上はコンテナが腐食していて1基から水が漏れているとのこと。
このことを地元の人に話したところ、驚いたことに、「東電のすることだからちっとも驚かないよ!
東電は親方日の丸だから。その辺の工場よりも危機管理はなってない。」とのこと。その反応にも驚きました。
東電の関連会社にご主人がお勤めの方がおられるので気を遣っていたら、
「そんなのはうちの主人の会社のような下請けに責任が負わされるんだ。」と。
「普通、いろんなものを整理したら、箱の表に内容を書くんじゃないですか?」、
「イヤ、表に書いて中身が分かっちゃいけないんだよ!」「じゃ、コンテナの底にでも貼っておけば!」
国と東電の安心安全神話に騙された地元の人々には、
国と東電に対する根深い不信感があり、事ごとにその不信は深まっていくのです。





7月30日の新聞に、処理水(トリチュウムを含む汚染水のこと)で魚(ヒラメや貝類など)を飼育。
と書かれている記事を見つけて私は唖然としました。トリチュウム汚染水の海洋放出が安全かどうかは、
その水で魚を飼ってみればわかるではないかと前から私が言っていたことで、
こんなことはとっくの昔に実験しているのだろうと思っていたのですが、
今頃になって新聞に載るほどのことかと驚きです。
このこと一つとっても東電や国の原発事故に対する取り組みの甘さを見ることができます。
セシウムの半減期は30年と長いのですが、トリチウムは13年と言われています。
東電の敷地はまだまだ大きく、7号機8号機の建設予定地が遊んでいるとのこと。
そこにタンクを増設して保管し、処理方法の研究をして本当に安全な方法を開発することの考えはないのでしょうか?
ケン・ブセラー博士(米ウッズホール海洋研究所)の記事に、
トリチウムの半減期を考えタンクで保管するほうが良い、
時間が解決してくれる、との考えがあることを知りました。
言うほどやさしくはないことは分かっていますが、
国と東電の姿勢があまりにもいい加減なのに驚き、怒りさえ覚えます。
何をそんなにいきり立っているのかと、皆さんは私の反応をおかしく感じておられるかもしれませんが、
トリチウム汚染水の海洋放出が実施され、風評被害が再燃すれば、何万人の生活と命がかかっているのですから、黙っていられないのです。
誰かに言いたい、もっと多くの人に本当のこと、地元の人たちの不安・苦しみを知って頂きたいのです。



 7月のある月曜日、カリタス南相馬のベースを休業にして、皆で岩手県の大籠殉教地へ巡礼に行きました。
東北にはたくさんの殉教者・殉教地があります。大籠の殉教地は伊達藩で製鉄の技術者がキリスト教を伝えたと言われています。
鉄砲の製造に鉄が欠かせないので伊達藩はこの製鉄所を中心に広まったキリスト教を保護していましたが
禁教令が厳しくなってかばい切れなくなってキリシタン弾圧へと進んでいきます。
しかし、キリシタンは領民と大変良い関係を築いていたので、処刑の場所や、葬り方に見せしめとしてでなく、大切に扱われたというところもあって、
現在でもこの殉教地をキリスト信者ではない市民が管理しておられます。
私たちに殉教の地を案内し説明してくださった方も信徒の方でなく、祖父からこう聞いていますと説明してくださいました。

●殉教公園:309人の殉教者にちなんで309段上 ●首塚:家族が首を袖に入れて運び葬った

小山の頂上の見晴らしの良い所に丁寧に葬られた殉教者の塚。
獣が掘り返さないようにと、石で表面が覆われている。
いろんなところに殉教の跡があるが、見せしめのためのものばかりでないことに、
この地の殉教者の領民の人々との良いかかわりの生活の証がくみ取られるのが、
私にとっては嬉しい発見でした。たくさんの紹介ができないのですが、
インターネットで「大籠(おおかご)の殉教者」で開けばよいのでぜひ見てください。
帰りに、カリタス南三陸のベースに寄り、10年にわたる活動報告を聞き、
住民の方々とのかかわりの構築等沢山勉強になりました。まさしく研修旅行でした。

今日はここまで。

援助マリア修道会南相馬修道院 北村令子





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