南相馬修道院からの便り。

東日本大震災、大津波、東京電力福島第一原子力発電所の爆発事故から10年と4カ月、
少しずつ前に進んでいるのが感じられるようになってきました。
私がここに来た2019年には、カリタス南相馬のベースに行き来する道々に見た草ぼうぼうの荒れ地も、
小高に近い原町区では、最近急に農地が耕され、田んぼになって、心を潤してくれる里山の景色が取り戻されてきています。

写真は5月初めの田植え直後のものです。


小高区は、これからという感じです。もちろん2015年ごろから稲の作付けを試み、
数年かけて出荷にこぎつけたお米農家もありますが、まだまだ農地の多くは手つかずで草ぼうぼうです。
それがここ最近、10年を迎えたからか、ブルドーザーやシャベルカーが唸り声をあげて土地をひっくり返しています。
聞くところによると、先ず大豆を植えて、それを肥料にして土に混ぜ、肥えた土を作る。
それを3年くらい繰り返してやっと水田になるのだそうです。

まだ荒れ地の小高の農地(ブルドーザーで耕されつつです) 遠くの山が削られている


放射能汚染で除染のため肥えた表土をはぎ取って、山を崩した土を運んできたのでしょうか?あちこちの山が削り取られています。
前にも書きましたが、山を崩したら風の道が変わって、気候も変わるのではないかと危惧しています。
南相馬は東北でも温暖な気候ですが、風の強いのには驚きます。
それも、震災後津波で防風林や海岸地域の村落が根こそぎ流されたので、太平洋から吹き付ける風は、
以前より強いのではないかとこれは私の勝手な考えですが、地元の方に話したら、「そうだよ、風の通り道になっているから強くなったよ」と。
ともあれ、農業に関しては目に見えて風景が変わってくるのが嬉しいことです。

その反面、海岸地域は、津波で農地として利用できなくなったことと、住んでいた人が亡くなって住宅地としても復旧できなくなった地域には、
広大な面積のソーラーパネルの海になっています。
不気味な感じのするソーラーの海は津波を経験した人にとって、あの日の海を思い出させるのです。あの日は黒い海が押し寄せてきたと。
写真は村上地区の津波で何もなくなった地域一面に設置されているソーラーパネルです。
お休みの日に良い場所で写真をと思って出かけたのですが、何故か工事をしていて、よい場所で撮れませんでした。
想像してみてください。あるいはカリタス南相馬のホームページで浪江のソーラーの海の動画があるのでそれを見てくださればよいと思います。

画面の手前に自動車を止めて撮影しました。道路の右も左も一面パネルです。 まだまだ工事続行中。


話を変えます。
7月末の土日月と南相馬最大の行事:野馬追が今年も神事だけとなりました。2年続けてこの行事に参加も観覧もできず、
とても残念に思っています。でも7月に入って、朝6時ごろ原町教会に行く途中にお馬さんに出会います。
文字通り「そこのけそこのけ お馬が通る」で車道を堂々と歩いています。信号が赤で止まるかと思いきや、
ここはお馬様が優先とばかり、渡っていきました。
もちろん騎手が左右確認して自動車が来ていなかったからだと思いますが・・・さすが歴史伝統の野馬追の地だけあると感心しました。
その時間にいろんなところから騎馬が集まって、祭場で朝練をするようです。祭場は生垣で囲ってあるので見えないのが残念です。
運よく生垣の木の間から馬の姿が見える時もありますが。馬と出会うのが嬉しいでした。

今回はここまでとします。

援助マリア修道会南相馬修道院 北村令子



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